新国立劇場のこつこつプリジェクト「リチャード3世」を見てきました。

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先日、新国立劇場でシェークスピアのリチャード3世を見てきました。といっても、一年かけて舞台として完成させていこうというプロジェクトでその名も「こつこつプロジェクト」。

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その経過を公開するという小劇場でのショート・プログラムでした。リーディング公演ってなんなのでしょう?もしかしたら朗読会みたいな感じなのかな?と思っていました。

たしかに台本的なものを手にとって、朗読会の形式を踏襲しているとは思いますが、実態は…素晴らしい舞台でした。

ネタバレ含むけど、まあ、見に行けば出オチだからいいよね。

ってことで、今回のリチャード3世はびっくり!だって…タイトルロールが女性なんです。

しかも…(まだまだいろいろな工夫がされています。それはお楽しみ!)

そして…今回はなんとヘイスティングスが死ぬところまで、つまり途中で終わりです。そのヘイスティングスの処刑される直前のセリフ「私の死を笑うものもまた、いつか同じ運命に見舞われるのだ」のシーン、傍らでとっても美女なリチャード3世が腹を抱えて笑うところで幕を閉じたのでした。必見です!

痺れました。美女?悪人=最高!(みるだけなら。)

新国立劇場は演劇も芸術監督が代わって、しかも、演目に毎年たのしみにしていた中劇場のシェークスピアがなくて、今年はかわりにギリシャ悲劇で…ものすごく心配だったのですが、杞憂であることがわかりました。ちなみに、リチャード3世、もし、見に行こうとおもったら、どこで上演されるか?どこのプロダクションか?にかかわらず原作は読むか、すくなくとも実際の歴史はすこし調べるなどして理解しておくと一層楽しめます。というのも登場人物が多いのです。そして…シェークスピア劇全般にいえることですが、小さなお子さんの同伴は避けた方が無難です。シェークスピア=上品とイメージしている人がいるらしいのですが、実際はまったく逆だったりします。結構、卑猥なジョークもあったりするのです。そういう意味でも、もし、シェークスピアをみにいくなら原作に目をとおしていくのはおすすめです。

 

そして、6月はオレステイア。チラシのインパクトが強過ぎます。

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この主人公オレステイアは上のチラシの羊のとなりの少年になります。主人公オレステイアのお父さんはアガメムノンです。アガメムノンは…そう、トロイ戦争でギリシャ軍の総大将ですね。

 

ギリギリのところで辛勝したトロイ戦争から、財宝たっぷりでアガメムノンはかえってくるのですが、何年にもおよぶトロイ戦争の間に奥さんのクリュタイムネストラは、実は浮気をしてしまうのです。そして、夫のアガメムノンがかえってきたら、浮気相手と共謀して、アガメムノンが風呂にはいるときに後ろから斧で、きりつけて殺害します。

 

王宮は母と浮気相手に乗っ取られ、アガメムノンの帰りをまっていた王子のオレステイアは追放されます。そこから始まる復讐劇。ギリシャ悲劇ってどうなんだろう?って私は思っていました。ですが、この新国立劇場で上演されると聞いて、はずかしながら私もそれから買って読みました。いがいや以外、シェークスピアよりかなりテンポよく話は進みます。

 

ただし、ギリシャ悲劇はその多くが、「トロイ戦争」の出来事が起点となっていることが多いです。なので、トロイ戦争を知らないと、もちろん、注釈があるのですが、それでもかなりわかりにくいというか、感情移入しにくいかもしれません。

 

ということでもし、ギリシャ悲劇、よんでみようかなという方がいたら、まずはホメロスの「イリアス」を一読することをつよくおすすめします。どこの図書館にもおいてありますし、岩波文庫でも買えます。

 

そんな暇ないという方のためにここで無謀にもすこしまとめてみたいと思います。

 

トロイ戦争というとどうしても昔のブラッド・ピッドのトロイを思い浮かべる人、多いとおもいます。このトロイという映画、実は大事な点がかけていて物語の面白さの本質を伝えそこねているのです。

 

イリアム(=トロイの別名)の面白さは、「ホメロス」が書いた「イリアス」でなければというのが私の考えです。で、ホメロスのイリアスが異常に面白い、その異常な点が、オリンポスの神々が戦争に参加していることにあるんです。

 

トロイ戦争というとトロイの木馬でギリシャ側が勝ったというイメージだと思いますが、実際は攻め手のギリシヤ側はギリギリまで追い詰められます。どうしてもギリシャ側に勝たせたい女神アテネはギリシャの武将ディオメディスに加勢します。そのシーンはまるでSFです。時間をとめ、ディオメデスにだけ姿をみせて、こう言います。「戦車の手綱をにぎろう。この戦場にいる神々と人間の区別がつくようにしてやるから神々を鉾を交えるな」と。実際にはアフロディーテに恋する軍神アレスと戦場で戦い、なんと打ち負かします。(といってもギリシャの神は死なないのです。)

 

ドイツのシュリーマンは子供のころ、イリアスが好きでトロイの発掘に着手し見事に発見したことで有名ですが、あのSFを読んで、実際にあったと思うこと自体、ナンセンスなくらい、人間と神々が入り乱れたとてもおもしろいお話なのです。

 

そのトロイ戦争のきっかけとなったのは「パリスの審判」。フランスワインと米国ワインが対決したイベントでつかわれることもありますが、もともとは、トロイの王子で、ギリシャ世界で一番の美男子パリスに3人の女神の中で誰が一番美しいか、きめてもらおう、その王子パリスによる審判が由来なのです。そして、3人の女神はそれぞれ自分を選んでくれたら…と対価を約束します。アテネは武功、ヘラは財産(だったかな)、アフロディテは美しさを。パリスはアフロディテを選び、スバルタ王、メネラオスの妻、ヘレネを受け取ります。つまり、トロイへ連れ去り、戦争がはじまります。(ギリシャの神々と約束をしたら、破ることは許されません。)ヘラもアテネも当然、パリス憎しで、ギリシャ側に付きます。もちろん、アフロディーテはトロイ側にたちます。他の神々も人間と一緒になって戦場でほこを交えることとなります。

 

で、アキレスがトロイの王子ヘクトルを打ち取り、パリスが放った矢をアポロンがアキレスのアキレス腱へとあてることで有名な二人の英雄は舞台をさります。

 

その後、ギリシャ側が撤退したと見せかけて、ギリシャはその陣に木馬を残していきます。そこにトロイ軍がきて、戦勝記念にもちかえり城内に運び入れ…そこからさきは皆さんご存知のストーリーですが、なぜ、そんな見え見えの手にひっかったのでしょう。そこもアテネが絡んできます。

 

そして、トロイ(=別名イリアム)陥落の大混乱の夜、王族の一人、アエネイスは父親と息子を両脇にかかえなんとか脱出します。ほかに逃れてきた人たちをまとめ、安住の地をめざして放浪の旅を続けるのがその続編、ローマの詩人ヴェルギリスによってかかれた「アエネイス」の内容になります。

このアエネイスではアテネは怒りの矛先を収めますが、ヘラは執拗にトロイの生き残りのアエネイス一行を苦しめます。(最後の方に唯一無事、領地に帰れたディオメデスも登場します。)

このアエネイスや、ホメロスの「ユリシーズ」こちらはギリシャ側の智将オデュッセウスが苦労してやっと自分の領地イタケー島に帰る話ですが、これらのストーリーと書かれた時代は全然別ですが、内容的なタイムラインがかさなっているのが、アイスキュロスのオレスティアになるのです。

 

トロイ戦争のきっかけをつくったメネラオスや、ヘレンも登場してとってもおもしろいです。最後まで因果が絡む悪夢の連鎖な復讐!

 

ギリシャ神話が成立したこと、当然といえば当然ですが、罰則はあっても法体型としての完成はまだみられません。神話の英雄の倒叙人物の一人がミスを犯します。その償いを例えばアポロンの宣託に従って償うと別の人物の殺害であったりと復讐が復讐の連鎖をよび、神々の信託の矛盾がでてしまいます。そこの手打ちさせるのが神々が物語に直接登場し、関係者の和解を促す、大岡裁き的なクライマックスを、デウスエクスマキナと言うそうです。

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